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井穴刺絡による痛風の痛みの改善例①

患者男性 36歳 IT企業の派遣社員 

症状

右足の母指内側部の痛み
見た目、発赤と腫れはひどくないが本人は非常に痛みを感じる

病歴

5カ月前に脳梗塞を発症して、現在は右手に軽い麻痺がある
エコーの検査で右の腎臓に結石があるが、尿管結石になったことはない
大腸にポリープがある

生活

独身 食事はすべて外食で飲酒が多い
痛風が起こってから夜は、宅配の痛風食(1食800円くらい)を食べている

治療

第1回目
痛みがひどくて、夜、ほとんど眠ることができなくなり、3日目で来院。
脳梗塞の持病があるので、できるだけクスリを飲みたくないということで、初めて鍼灸治療にかかることになった。
便通が2~3日に1回である。
右足の母趾に体重をかけて歩くことができない。
踵付きのサンダル履きでスクーターに乗って来院した。

背臥位
患部を見ると右母趾の中足指節関節の外側部が赤くなって腫れている。
患部に軽く触れて最も痛む部位を調べると、関節部の内側と外側(行間穴の内側)であった。
母趾を軽く底屈、背屈すると両方で痛みが出たが、背屈の方で痛みが強かった。
他、下肢で痛みの強かったツボは、脛骨内側部の脾経・地機穴と脛骨部の肝経・中都穴であった。
痛風の患部は脾経なので、左右の脾経井穴・隠白穴を同時に指圧すると、患側の右側に圧痛が強かった。
患者さんに、「このツボから血を取ると痛みが軽減します」と説明して井穴刺絡を行った。
グローブをはめて隠白穴を消毒綿で拭き、母趾の基節骨を押さえて爪を圧迫すると井穴・隠白穴が赤黒い色に変化したので、刺絡をすると効果があると判断して、三稜鍼を立てて切皮した。
基節骨を押さえて爪を圧迫しながら末節骨を底屈すると赤黒い血がにじんだ。
圧迫しては消毒綿で拭き取ることを15回くらい繰り返すと、血の色が明るい赤色になってきたので終了。
隠白穴に血がにじまないように紙テープを貼った。
痛風の痛みが出ている関節の内側と外側の2箇所に円皮針を貼って腹臥位になってもらった。

腹臥位
背腰部に診断按摩を行と、右膀胱経2行線の魂門穴から志室穴まで圧痛があったが意舎穴に最も圧痛が強かった。
このツボを重ね母指持続圧すると、右足の痛風の患部がスーッとして痛みが軽減するような感覚になった。
足の母趾を背屈してもらうと強張り感が少し軽減した。
意舎穴に1寸3分・00番鍼を刺鍼して回旋・雀啄をすると、最初、右腹部に響いて、次に右母趾内側の痛風患部に、普段、痛くなる感じと同じような感覚で響いた。
我慢をしてもらって1分間くらい響かせてから置鍼して温灸をした。
温灸をするとさらに痛みが強くなった。
「鍼灸治療をして、治療中に普段、痛みを感じる感覚で響くと、後で痛みは軽減します」説明して我慢してもらった。

背臥位になってもらい円皮針を取って、患部を触ると痛みはやや軽減していた。
治療が終わって立って歩いてもらうと、痛みは少し楽になった感じであったが、しびれたような感覚で右足を床に十分に着くことができなかった。
原付スクーターを運転できるので、昼食は自然食のレストランを探して食べるように勧めた。

2回目 初回の治療の次の日
1回目と同じ治療をした。
まだ赤く腫れているが1回目の治療のあと、痛みがひどく起こらなくて眠れたという。

背臥位
井穴刺絡を行い、疼痛部位に円皮針を貼った。

腹診
1回目は腹診をしなかったので、調べると、右季肋部の肝経募穴・肝兪穴とその下の臍の横、脾経・大横穴に硬結・圧痛があって冷えていた。
痛風の疼痛のあるツボを2穴、指圧しながら、腹部の期門穴と大横穴を圧迫すると、圧迫不快感が軽減した。
また左天枢穴の下、外陵穴に硬結があった。

腹臥位になってもらった。
右意舎穴を母趾持続圧すると足の疼痛部位に響いた。
1分間くらい指圧したあと母趾の背屈・底屈運動をしてもらった。
00番鍼で刺鍼して置鍼して温灸をすると、1回目と同様に、普段、痛くなる感覚が起こった。
終わって歩いてもらうと、痛みは30%程度、軽くなった感じで、右足に少し体重をかけて歩くことができた。

3回目 初回の治療から3日目(3日間、連続治療)
眠れた。さらに20%くらい痛みが軽減した感じで、最初からすると痛みの程度は半分くらいになった。
右足に体重をかけてあるけるが母趾で蹴ることはできない。
井穴刺絡は、黒い血の出方が少なくなった。
痛風患部に円皮鍼を貼って、その上から軽く揉むと、最初は痛みが強かったが1分くらいたって痛みが軽くなった。
基節骨を固定して、母趾の底屈・背屈他動運動を行った。
これも最初、痛みが出たが、次第に痛みは軽減して母趾の運動を行うことができるようになった。

治療4回目 3回目の治療から3日後
筆者の治療にかかる以前、排便は2~3日に1回であったが、昨日と今日の朝、大便が出た。
激痛が続いていたが、仕事は休まず行っていた。
腹臥位で意舎穴に鍼をしても、はっきりとは足に響かなくなった。
鍼をしながら右足指の背屈・底屈をしてもらうと、痛みは起こるがだいぶ大きく背屈・底屈ができるようになった。
3回目の治療の夜から、6時間くらいぐっすりと眠れているという。
右足に体重をかけて母趾で蹴ることができるようになった。
しかし靴は履くことができなく、サンダルである。
アルコールは、激痛になってから飲む気にならず、飲んでいない。
夜は痛風食で昼は自然食レストランで食べると、すごく体調がよいので、いろいろ探して行くのが楽しみですという。

第5回目 4回目の治療から3日後
井穴刺絡はしなかった。
他、1回目とほぼ同じ治療をした。
普段、痛みはほとんど起こらなくなり、右足にだいぶ体重をかけ歩けるようになったので、今回で治療を終了した。

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井穴刺絡による痛風の痛みの改善例②


●痛風で足の親指の井穴から刺絡して痛みが半減した。男性 55歳。

(ご夫人が当院の鍼治療にかかっている)
海外出張から羽田に着いたとき、右足の親指がものすごく痛くなって歩くことができず車椅子を借りて降りた。
ご夫人の車で、病院よりも当院に直行した。
以前から尿酸値は高かったが、歩けないほどの痛みが出たのは初めてとのこと。
着替えずにベッドに仰向けになってもらい、靴下を脱いで患部をみると、右親指の中足指節関節が赤く腫れている。
親指の爪の生え際も、左親指と較べると赤黒く瘀血の反応があった。
肝経の井穴・大敦穴と脾経の井穴・隠白穴から刺絡することにした。
指サックをはめて、三稜鍼の刃を1㎜出してネジをロックした。
指先を強く触ると痛がるので、極力、力を入れない触り方で井穴を消毒して三稜鍼を当てて切皮した。
(図参照 この写真は実際の患者さんではありません)

 

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