~東京都南青山にある治療院です~
1.鍼灸治療
手関節の痛み 右手関節を背屈すると大腸経・陽池穴が痛む
女性 56歳


数か月前から徐々に痛みだして、最近はペットボトルを持っても痛む。
〔坐位〕
水が入ったボトルを持つと、痛みの部位は橈骨と大菱形骨の中間部、大腸経・陽池穴の部位であった。(①)
大腸経井穴・商陽穴を左右指圧すると右側に圧痛が強かった。右商陽穴を指圧しながらペットボトルを持つと痛みが軽減した。
商陽穴(図2)に長さ0.6㎜の円皮鍼を貼った。
右手三里穴(図2)を揉むと硬結・圧痛があった。このツボを指圧しながらペットボトルを持つと痛みが軽減した。
手三里穴に1寸・00番鍼を刺鍼して回旋・抜き刺しして響きを得て置鍼した。
陽池穴(図2)に1寸・00番鍼を刺鍼して回旋・抜き刺しして響きを得て置鍼した。
〔腹臥位〕
肩甲間部に診断按摩を行うと外肺兪穴(図2)に圧痛があり、背腰部に診断按摩を行うと右志室穴(②)に硬結・圧痛があった。外肺兪穴を持続圧すると陽池穴にジーンとした感覚が起こった。
外肺兪穴に1寸3分・0番鍼で刺鍼して十分に響かせた。志室穴に1寸6分・1番鍼で刺鍼して回旋・抜き刺しを行って十分に響かせた。置鍼してある陽池穴と外肺兪穴、志室穴に温 灸を行った。(③)
ペットボトルを持つと、痛みは50%程度改善していた。
ペットボトルを持たせて、痛みを誘発した状態で陽池穴に刺鍼して運鍼し、響かせた。さらに置鍼したまま運動鍼を行わせると、痛みが起こったが我慢させて行わせた。鍼を抜いてペットボトルを持ち手関節を背屈させると、痛みは最初に較べて70%改善していた。陽池穴に円皮鍼を貼って終了した。

機関誌178号 (04年11月 発行) 掲載
右足関節部、胆経・丘墟穴の痛み
女性 48歳

図1

図2
1年前に階段を下りた時に右足を捻って、痛めたところがなかなか治らない。
何かの拍子にまた捻ってしまう。
背臥位で調べると、痛みのツボは胆経・丘墟穴であった。
足関節を内反して指圧すると痛みが再現した。(図1)
上腹部、胆経募穴・日月穴を左右圧迫すると右側の方に圧痛が強かった。
症状が長引くと募穴にも圧痛が現れる。
1)治療
押し手で足関節を内反に保って丘墟穴に1寸3分・0番鍼を刺入し、回旋・雀啄して響かせた。(図2)
置鍼して温灸を当てた。
胆経募穴の日月穴にジーンとした感覚が起こった。
鍼をテープで止めて腹臥位になった。
背腰部に診断按摩を行うと右胆兪穴の外側の陽綱穴に硬結・圧痛があった。
このツボを重ね母指で持続圧すると、置鍼してある右丘墟穴に響いた。
1寸3分・0番鍼で刺鍼して回旋・雀啄した。響きを得て置鍼して温灸で温めた。
背部と足関節の鍼を抜いてベッドから降りて立った。
ベッドに座って、右足関節を内反位にすると痛みが起こった。
この状態を保って丘墟穴に刺鍼して響かせて抜鍼した。(図3)
もう一度足関節を内反して体重をかけると、痛みは治療前に較べて70%程度改善していた。
図3

機関誌177号 (04年09月 発行) 掲載
左肘関節部、上腕骨外側上顆の痛み
女性 42歳

図1
図2

患者さんはテニスが趣味で左効きである。
バックハンドで打った時に左肘に痛みが起こる。
1㎏のダンベルを持たせて同じ動作を行わせると、上腕骨外側上顆に痛みが起こった。(図1)
疼痛部位は三焦経の流注部位で、天井穴に近いので「変動天井穴」とする。
〔腹臥位〕
・診断
背腰部に診断按摩を行うと肩甲骨部の小腸経・天宗穴と肩甲骨内縁の膀胱経・膏肓穴に激痛があった。(図2)
肘関節疼痛部位に1寸・00番鍼を刺鍼して回旋・雀啄し、響きを得て置鍼した。
患者に手を握らせて肘関節を伸展させるように力を入れさせると、さらに響き的な痛みが起こった。(図3)
天宗穴に1寸3分・0番鍼を刺鍼して運鍼し、響きを得て置鍼した。
膏肓穴に1寸・3番鍼を刺鍼して運鍼し、響きを得て置鍼した。
肩甲骨内縁のツボには長さ1寸の鍼を使って、刺入の深さを2㎝以内にすると安全である。
置鍼してある3穴に温灸を行った。
例)肘痛のツボと膏肓穴の温灸(図4)
座ってダンベルを持たせ、バックハンドの動作をさせると痛みは70%程度改善していた。
残った肘の疼痛部位に円皮鍼を貼った。
図3

図4

機関誌176号 (04年07月 発行) 掲載
左鼠径部、脾経・衝門穴の痛み
女性 57歳
脾経・衝門穴(図1)は鼠径部の大腿動脈拍動部にあるツボである。
しゃがむと痛みが起こる。食事は甘い味、塩辛い味、脂っこい味、なんでも濃い味が好きである。
〔背臥位〕
・診断
左股関節を屈曲して内旋すると痛みが起こった。内旋した状態で足部の脾経・公孫穴(図1)を持続圧すると衝門穴の痛みが軽減した。左側腹部、第11肋骨端の脾経募穴・章門穴(図1)を圧迫すると圧痛があった。鼠径部の衝門穴を指圧しながら、募穴・章門穴を圧迫すると、章門穴の圧痛が軽減したので、鼠径部・衝門穴の痛みは脾すなわち膵臓の弱りから起こっていると推測した。
・治療
鼠径部の衝門穴に鍼体・40㎜、太さ0.14㎜のステンレス、ディスポ鍼で刺鍼して回旋と抜き差しを行って響かせたて置鍼した。公孫穴に鍼体・30㎜、太さ0.12㎜の鍼で刺鍼して、回旋と抜き差しを行って響かせて置鍼した。
2穴の置鍼部に温灸を当てて温めた。
〔腹臥位〕
背腰部に診断按摩を行った。
左意舎穴(図2)に激痛があった。このツボに鍼体・50㎜、太さ0.16㎜の鍼で刺鍼して回旋・抜き差しを行って響かせて置鍼した。
温灸を当てて1分間温めた。(図3)
温灸を一旦置いて、置鍼の鍼を回旋・抜き差しして響かせた。
もう一度温灸を行った。
〔立位〕
・治療効果の確認
鍼をすべて抜き、ベッドから降りてしゃがむ動作を行うと、痛みは50%程度改善していた。

図1

図2
