関節運動法

● 腋下体温を上げることができる関節運動法
左右の腋下体温を測定して、低い側を調べる。
例 女性 52歳。左側が36.4度、右側が36.2度で右側が0.2度低かった。

背臥位
①腕尺関節の関節運動法 過伸展と凹滑り法
腋下は心経と心包経が通っている。心経と心包経の陽経は小腸経と三焦経で、この経絡で常に冷えている部位は上腕外側部と後側部である。
この部位の筋の収縮・弛緩は肘の腕尺関節によって行われる。
従って腕尺関節の伸展と凹滑り法に抵抗運動を加えて、筋を屈伸すると皮膚の温度が上がって腋下体温を上げることができる。

1)過伸展と凹滑り法
母指で尺骨鈎状突起を圧迫しながら肘で手部を押す。

2)過伸展と凹滑り法に抵抗運動を加えて筋力を強化して皮膚温を上げる。
母指で尺骨鈎状突起を圧迫しながら患者さんに肘関節を伸展させて、それに抵抗する。
ゆっくりと30回、約5分間行った。
治療師が手で上腕をつかむと温めることになるので、つかまないで手関節の上に乗せて行った。

②距腿関節の膀胱経の底屈と凸滑り法
足関節をやや内反位。治療師は踵を押し下げて凸滑り法を行いながら、患者さんに底屈に力を入れてもらい、 それに抵抗して下腿外側部の筋に力を入れて皮膚の温度を上げる。
ゆっくりと20回、3分間行った。
・今回の実験は上肢と下肢の関節運動法だけで下記の脊椎椎間関節には行わなかった。

右上側臥位

①胸椎5/6椎間関節の関節運動法
1)両手で行う胸椎5/6棘突起間の順滑り法と逆滑り法
2)胸椎5/6棘突起間の順捻転と逆捻転
上腕外側部の響きが起こるように、適格に強く行う。

②腰椎2/3椎間関節の逆捻転
第5腰椎棘突起の下から5、4、3、2と数えて腰椎2/3棘突起間の横に手根の豆状骨をあてて逆捻転を行う。
上下、3か所に行って最も響き的な感覚が強い部位を調べて、そこに強めの力で持続して行う。

治療効果の確認
背臥位
腋下体温を測定すると左は36.5度で0.1度、右は36.4度で0.2度上がった。

● 顎関節の痛みを軽減できる関節運動法
顎関節は内臓と経絡では脾(膵臓)・胃と脾経・胃経に関係が深い。
これらの内臓と経絡に関係した関節に関節運動法を行うと顎の痛みを軽減することができる。
口を大きく開けると左側の顎関節に痛みが出るとして説明する。

背臥位
(1)左母趾の中足指節関節の外転と凹滑り法
(2)左第2趾の中足指節関節の底屈と凹滑り法(基節骨を底屈する)、同時に指節間関節の背屈と凹滑り法(中節骨と末節骨を背屈する)を行う。
(3)(1)と(2)の手技を同時に行う。
口を開けて顎関節に痛みを出した状態で手技を行うと、痛みが軽減することが分かる。

左上側臥位
胸椎11/12棘突起間と胸椎12/腰椎1棘突起間を触診して詰まりと圧痛があることと、その横の筋に硬結があることを確かめる。
(4)この2つの棘突起間に両手で行う順滑り法と逆滑り法を行う。
(5) 胸椎11/12椎間関節と胸椎12/腰椎椎間関節に逆捻転を行う。

口を開けて顎関節に痛みを出した状態で手技を行うと、痛みが軽減することが分かる。
脊椎椎間関節部の響く的な感覚が起こらなくなるまで手技を行う。

背臥位
(6)後頭骨/環椎関節の完骨の離開法を左側に強く行う。
手技を終了してもう一度、口を開けると顎関節の痛みが軽減していることが分かる。

● 肺の機能(匂いが敏感になる、呼吸を楽にできる、母指と示指のOリングテストが強くなる)が向上する関節運動法
肺に関係が深い関節に、関節運動法を行う。

背臥位
(1) 胸肋関節の凸滑り法
胸部、腎経のツボ、彧中穴、神蔵穴、霊墟穴、神封穴を指圧して圧痛の強いツボを調べる。
例えば右霊墟穴に圧痛が強い場合、第3肋骨の上方凸滑り法と第4肋骨の下方凸滑り法を行って響き的な感覚の強い方を重点的に行う。
例 右第4肋骨の下方凸滑り法
第2肋骨から第4肋骨まで、「息を吸って」と指示して下方凸滑り法、「息を吐いて」と指示して上方凸滑り法を行う。

(2) 上肢の関節
①腕尺関節の過伸展と凹滑り法
この時にのどの天突穴を圧迫しながら行うと圧痛が軽減することが分かる。
②手の母指の背屈と凹滑り法
手関節を背屈しながら基節骨と末節骨を押しながら背屈する。

右上側臥位
(3) 脊椎椎間関節の関節運動法
①肺兪穴の位置する胸椎3/4椎間関節に順滑り法と順捻転、逆滑り
法と逆捻転を行って響き的な感覚の強い方を重点的に行う。
例 順滑り法と順捻転を行った。
② 患者さんに「息を吸って」と指示して順捻転を行い、「息を吐いて」と指示して逆捻転を行う。
この関節運動法で呼吸が大変、楽になる。
③第2、第3肋横突関節の滑り法
「息を吸って」と指示して第2肋骨を頭方に圧迫しながら上肢を上方に押す。
「息を吐いて」と指示して第2肋骨を足方に圧迫しながら上肢を下方に下げる。
④大椎穴の位置する胸椎7/頸椎1椎間関節に両手で行う順滑り法と 逆滑り法を行う。
のどの天突穴を圧迫しながら行うと圧痛が軽減する。

背臥位
鼻の症状改善に内天柱穴の離開法。鼻が通るまで行う。
コーヒー豆の匂いを嗅ぎながら行うと感覚が強くなることが分かる。

●肩甲骨部・小腸経・天宗穴の硬結・圧痛を軽減できる関節運動法

小腸経の経絡上の症状は、心の弱りで起こっていることが多い。
小腸経と心経に関係する関節に手技を行うと軽減することができる。
天宗穴は肩甲骨部の肩甲棘の下方、1寸(約2㎝)にある。
[天宗穴の圧痛の強い側を上に側臥位](右天宗穴に圧痛が強いとして説明する)

⑴仙腸関節の関節運動法
➀ 上部離開法
 仙腸関節部にある小腸兪穴の圧痛を触診して確かめる。
 上部離開法を行ってジーンとした感覚が強くあれば、この関節に機能異常があるの で、響き的な感覚が起こらなくなるまで持続して行う。
➁ 前屈の手技
 前屈上方滑り法と前屈下方滑り法を行って、
 響き的な感覚の強い方を選択して行う。
 例。前屈上方滑り法を行いながら天宗穴を圧迫すると圧痛が軽減した。
➂ 後屈の手技
 後屈上方滑り法と後屈下方滑り法を行って、
 響き的な感覚の強い方を選択して行う。
 例.後屈上方滑り法を行いながら天宗穴を圧迫すると圧痛が軽減した。
➃ 心兪穴の位置する胸椎4/5椎間関節に4種類の手技を2組にして行う。
 胸椎4/5棘突起間の詰まりと圧痛を調べる。
 逆滑り法と逆捻転、順滑り法と順捻転を行って響き的な感覚の強い方を調べる。例 .逆滑り法と逆捻転を行いながら天宗穴を圧迫すると圧痛が軽減した。 
 この手技を3回行ったら、順滑り法と順捻転も1回行う。

[背臥位]
➀ 後頭骨/環椎関節の風池穴の離開法を行う。
 この関節は全身の関節の関節機能異常を改善して筋の硬結・圧痛を軽減することが できる。天宗穴を圧迫しながら行うと症状が軽減することが分かる。
➁ 上肢の関節の関節運動法
 腕尺関節の過伸展と凹滑り法
 手関節を背屈して、手指関節の背屈と凹滑り法。

 

● 鼠径部の大腿動脈部(脾経・衝門穴)の痛みを軽減できる関節運動法

鼠径部の経絡は脾経と胃経が流注している。特に脾の弱りで痛みが起こることが多い。
脾の募穴である第11肋骨外端の章門穴と鼠径部・衝門穴の圧痛を軽減できる関節に手技を行うと改善することができる。
[衝門穴の圧痛の強い側を上に側臥位]

⑴仙腸関節の関節運動法
①上部離開法
必須の手技である。ジーンとした感覚がなくなるまで持続して行う。
②前屈の手技
前屈上方滑り法と前屈下方滑り法を行って、響き的な感覚の強い方を選択して行う。
例。前屈上方滑り法を行いながら衝門穴を圧迫すると圧痛が軽減した。
③後屈の手技
後屈上方滑り法と後屈下方滑り法を行って、響き的な感覚の強い方を選択して行う。 例.後屈上方滑り法を行いながら衝門穴を圧迫すると圧痛が軽減した。
④脾兪穴の位置する第11/12椎間関節の逆捻転
第11/12棘突起間の詰まりと圧痛を調べる。その横の筋の硬結(脾兪穴)を調べる。
⑤第11肋横突関節の滑り法
上方(頭側)滑り法を重点的に下方(足側)滑り法も行う。

[背臥位]
①後頭骨/環椎関節の風池穴の離開法を行う。
この関節の全身のあらゆる関節機能異常を改善することができる。
衝門穴を圧迫しながら行うと症状が軽減することが分かる。

②足関節の関節運動法
足の母指の中足指節関節の外転と凹滑り法

●呼吸を楽にすることができる関節運動法
[背臥位]
肺経募穴・中府穴の圧痛の強い側を重点的に行う。
➀第2胸肋関節の凸滑り法
「息吸って」と指示して、第2肋骨の胸骨関節面を足方に圧迫しながら腕を頭方に上げる。 
「息吐いて」と指示して、第2肋骨の胸骨関節面を頭方に圧迫しながら腕を足方に下げる。 
[側臥位 肺経募穴・中府穴の圧痛の強い側を上に側臥位]
➀仙腸関節
「息吸って」と指示して後屈の手技を行う。
「息吐いて」と指示して前屈の手技を行う。
➁胸椎3/4椎間関節の関節運動法
「息吸って」]指示して胸椎4番棘突起を床側から天井側に圧迫固定して、肩部を背部に押して胸椎3/4椎間関節に順捻転を行う。
「息吐いて」と指示して胸椎3番棘突起を床側から天井側に圧迫して、脇腹を背側かつ足方に押して胸椎3/4椎間関節に逆捻転を行う。 
➂第2肋横突関節の滑り法
「息を吸って」と指示して第2肋骨と腕を頭方に圧迫する。
「息吐いて」と指示して第2肋骨と腕を足方に圧迫する。 
[背臥位]
➃手指の関節の関節運動法
「息を吸って」と指示して手関節を背屈と凸滑り法をしながら、第1中手指節関節と指節間関節の背屈と凹滑り法を行う。 
「息吐いて」と指示して手関節の掌屈と凸滑り法をしながら、第1中手指節関節と指節間関節の掌屈と凹滑り法を行う。 

●脇腹の肋間神経痛(第10肋骨)を軽減できる関節運動法
第10肋骨の痛みは胆と胆経に関係の深い。
胆経募穴・日月穴と背腰部、胆兪穴の位置する胸椎11/10椎間関節と第12肋横突関節、また下肢の胆経の関節の機能異常を改善すると痛みを軽減することができる。
[患側を上に側臥位]
⑴ 仙腸関節
①上部離開法の他、前屈と後屈で機能異常のある手技を行う。
⑵ 脊椎椎間関節
①胸椎11/10棘突起間のつまりと圧痛があること、その外側の胆兪穴の筋に硬結があることを調べる。
1)治療師は腹側に位置する
逆滑り法と逆捻転、順滑り法と順捻転の4種類の手技を行って、最も響き的な感覚のある手技を選択する。
例.逆捻転で響き的な感覚が強く、この手技を行いながら神経痛の部位を圧迫すると圧痛が軽減した。   
2)治療師は背側に位置する
胸椎11/10椎間関節の逆捻転を行って響き的な感覚が強くあることを調べる。
試しにその上の肝兪穴の位置する胸椎10/9椎間関節と下の脾兪穴の位置する胸椎12/11椎間関節に逆捻転を行って響き的な感覚が少ないことを調べる。
例.胸椎11/10椎間関節の逆捻転   
⑶肋横突関節の滑り法を主に上方に行う
例.第10肋骨の肋横突関節の上方、下方滑り法 ●上方滑り法  
[背臥位]
⑴ 下肢の関節
①脛腓関節の滑り法
天井側と床側に行って響き的な感覚の強い方を選択して脇の神経痛の痛みが軽減することを確かめて行う。         
②第4趾の基節骨を底屈し、中節骨を背屈の凹滑り法を行う。 
③後頭骨/環椎関節(完骨穴)の離開法 

●肩甲間部・膏肓穴の硬結・圧痛を軽減できる関節運動法
膏肓穴は第4・5胸椎棘突起間の外側3寸にある。
また経験上、三焦兪穴の位置する腰椎1/2椎間関節とも関係が深い。
患者さんに膏肓穴を指圧してもらいながら、これらの関節に手技を行って軽減することを確かめて治療関節と判断して、その関節の響き的な感覚が起こらなくなるまで手技を行うと、膏肓穴の硬結・圧痛を軽減することができる。
[患側を上に側臥位]
⑴ 仙腸関節
➀上部離開法
➁前屈の手技
前屈上方滑り法と前屈下方滑り法を行って響き的な感覚の強い方を選択して、その手技を行いながら膏肓穴の圧痛が軽減することを確かめて治療関節と判断して手技を持続して行う。
例.前屈上方滑り法で膏肓穴の圧痛が軽減した。       
➂後屈の手技
後屈上方滑り法と後屈下方滑り法を行って上記と同様に行う。
⑵ 脊椎椎間関節
➀三焦兪穴の位置する腰椎1/2椎間関節の逆捻転 
➁厥陰兪穴の位置する胸椎4/5椎間関節の逆捻転、あるいは順捻転
⑶ 上肢の関節
➀ 手関節を掌屈し、第4指関節の掌屈と凹滑り法       
➁ 手関節を背屈し、第4指関節の背屈と凹滑り法        
➀と➁の手技で膏肓穴の圧痛を軽減できる手技を行う。
⑷頸部の関節
➀後頭骨/環椎関節(完骨穴)の離開法
⑸ 患部関節の関節運動法
➀第4肋横突関節の上方滑り法、あるいは下方滑り法